MINERALOGY
【第12講座】
日本の石(国石) ―翡翠―
日本鉱物科学会という団体があり
この団体が2016年に
社団法人という「会社」のようなものになり
その記念として9月24日の会議で
「国の石」というのを決めました。
◆
そこで決まったのが「翡翠」です。
他候補の顔ぶれは
「花崗岩」「輝安鉱」「自然金」「水晶」
でした。
「輝安鉱」は愛媛の市ノ川が有名で
大英博物館などにも展示されていますが
ややパンチが弱いかなと思います。
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「自然金」は
確かに「黄金の国」と言われた日本ですから
うなずけなくもないですが
これもやや必然性に欠けます。
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「水晶」は
「日本式水晶」と呼ばれる結晶の形がありますが
これも、説得力はあまりない気がします。
◆
「花崗岩」に至っては
地味すぎて、コメントすら浮かびません。
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疑問なのは
なぜ「黒曜石」がエントリーしていなかったのか。
「黒曜石」は
北海道のものなども有名ですが
長野県の和田峠のものは
石器時代の一大ブランドで
東北地方や関西地方にまで交易で広がったと聞きます。
「翡翠」に負けず劣らず
古代日本流通経済の要でした。
「国石」として候補に挙がって
しかるべきでなかったでしょうか。
ともかく
「国石」として「翡翠」が決まったわけですから
いろいろと「翡翠」についてまとめてみます。
◆
まず、一般的に「翡翠」と言うとき
それは「鉱物」ではなく「岩石」として
呼んでいるということ。
「鉱物」と「岩石」の違いについては
本編の第一講座をご参照ください。
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「鉱物」としての「翡翠」は
非常に意味合いが狭く
「ヒスイ輝石」という一鉱物名を指します。
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通常は
「ヒスイ輝石」単体で成立する石は珍しく
たいていは
様々な鉱物のブレンドになっています。
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ですから
一般に「翡翠」と言う場合は
「オンファス輝石」や
「コスモクロア輝石」などが
ブレンドされたミックス岩石の総称なのです。
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なお
日本ではこの輝石系の硬い石を
「翡翠」と呼んでいますが
中国ではむしろ
「角閃石」や「緑閃石」などの閃石系の
柔らかい石を「翡翠」と呼んでいます。
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前者は「硬玉(ジェダイト)」
後者は「軟玉(ネフライト)」
と呼んで区別しています。
中国製の手の込んだ翡翠細工が目を引きますが
それは「軟玉」という
柔らかい素材の為せる技かもしれません。
◆
ところで
「翡翠」と書いて
「かわせみ」とも読むことをご存知ですか。
これはこじつけでも当て字でもなく
元々中国では
「翡翠」とは「かわせみ」のことだったのです。
ちなみにオスが「翡」でメスが「翠」です。
やがて鳥のカワセミのように鮮やかな石である
ネフライトを指して
「翡翠」と呼ぶようになったようです。
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このように鮮やかな印象をもつ「翡翠」ですが
実は純粋なものは透明で
その結晶が無数に密接にからまることで
見た目は白色になります。
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よく緑色や紫色のものを見かけますが
緑色は「クロム」、紫色は「チタン」が少量
微量元素として含まれるためです。
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「翡翠」の肉眼鑑定は難しく
ベテランは口に含んで舌ざわりで判断すると
聞いたことがありますが
果たして本当でしょうか。
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よく見間違える石は
「ロディン岩」や「ネフライト」などで
それらは「化かす」からなのでしょうか
「キツネ石」などと呼ばれています。
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よろしければ
あなたも糸魚川の海岸で
翡翠探しにチャレンジしてみてください。
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玉扇太郎の現地レポートはこちら。